昨年「湘北vs.山王工業」を描いた映画『THE FIRST SLAM DUNK』が公開されました。
原作ファンでだった私はSLAM DUNKの記事は多く書いおり、『THE FIRST SLAM DUNK』も公開初日の最初の放映を見に行きました。
この記事では『THE FIRST SLAM DUNK』のネタバレを書いていうと思います。
長らくアニメ未化の山王戦
山王戦は原作でも屈指の人気エピソードでしたが、これまでアニメ化されることはありませんでした。1990年代に放送されたTVアニメは陵南戦で終了し、インターハイ編は映像化されなかったのです。原作ファンは20年以上にわたり、山王戦のアニメ化を待ち続けていました。
待望の山王工業の登場
湘北はこの試合で「ワルモノ」の役割を果たします。試合会場は山王のファンが多数で、湘北の勝利が期待されていない状況。湘北の役割を示唆するように、The Birthdayの「LOVE ROCKETS」が流れ、独特の雰囲気が演出されます。
映画ではついに山王工業が登場。王者の風格をそのままに、滑らかなアニメーションで湘北の前に立ちはだかります。
映像が素晴らしく、先に湘北メンバーが1人ずつ描かれながら登場していき、全員がそろった後、ついに相手チームの足元から映像が映し出されました。
そして映像のアングルが上がっていき、山王工業が見えた瞬間思わず『キッター』と心で感動しました。
宮城&花道の“奇襲”シーン
テンポのよい演出に注目。映画は時間をかけずに、バスケットボールの魅力を完璧に再現しようとしています。
原作者・井上雄彦の挑戦的な作風が花道のアリウープとともに観客に叩きつけられる“奇襲”シーンに表れています。
原作ファン向けの作品
映画は完全に“原作ファン向け”の作品。物語が進行する中で、説明が一切ないまま進むため、原作を知らない人には少し不親切かもしれません。
しかし、原作ファンにとっては、余計な時間を割かないことがありがたかった。
ただテレビ版のアニメのような形での映画化を期待している方にはかなりあっさりした映像となっているので、名シーンを寄りでドーンと描かれるようなアニメーションではなかった。
『SLAM DUNK』映画は、物語の後半に焦点を当てた作品
『SLAM DUNK』映画は、試合の後半と宮城の生い立ちに焦点を当てた作品となっています。そのため、映画の都合でカットされたシーンがいくつかあり、特に河田美紀男(通称・丸男)と花道の勝負や、名ゼリフ「大好きです 今度は嘘じゃないっす」などの名場面が省かれてしまいました。
前半戦のダイジェスト感
映画の前半戦はダイジェストのようにサクッと進行し、河田美紀男と花道の勝負はまるごとカットされました。このカットにより、後半戦で花道が流川のシュートを邪魔する場面も省かれています。これは後のラストのパスに繋がる伏線であり、花道がバスケットボール選手として成長する一瞬を示す重要なシーンでしたが、こちらは残念ながらカットとなりました。
山王戦の名ゼリフも……
山王戦での名ゼリフ「大好きです 今度は嘘じゃないっす」も映画には登場しませんでした。
そして宮城にスポットを当てた映画のため晴子や桜木軍団がコートに登場することもなく、彼らは大人しく観客席に収まっていました。
原作ファンとしてこのシーンは映像で見たかった…
試合時間残り10秒無音のラスト
原作ファンなら誰もが涙しただろうし、作中屈指の名シーンである山王戦のラスト。
試合時間残り10秒を切った場面は、原作をなんども読み結末を知っているにも関わらず、まるで初めて見るような緊張した感覚。
原作においてもセリフがまったくないページだが、映画本作は無音の映像が流れ続ける。
そしてそれがいい緊張感をもたせてくれる最高のクライマックス。
湘北が1点リードしている状況で、山王のエース沢北がすぐさま取り返すシュートを決める。
しかし、諦めていない桜井花道は動揺せず、ゴールへ向かいすぐさまダッシュ。
まっすぐに「右45度」を目指して走り抜ける。そこはシュート合宿で見つけた花道が最も得意とするポジションだ。
そして、流川が全速力でボールを運ぶ。相手コートまでボールを進め、ジャンプシュートの体勢に入るも完璧にシュートコースを塞がれたその瞬間、「右45度」で待ち構えている花道が目に入る。
「左手はそえるだけ」
映画で桜木花道この名言に音声はなく最後まで無音を貫いた。
だがおそらく原作のファンにはその無音の映像すべてに脳内で音声が流れていたんではないだろうか。
そしてあの名シーンへと繋がっていく。
宮城の複雑な過去
宮城の過去は原作ではほとんど明かされていませんでした。彼が原作ファンにとっては謎めいていた過去が、映画で新たな光を放つこととなりました。宮城は自由奔放に見えつつも、家庭環境に問題を抱えていたのです。幼少期に亡くなった兄・ソータに影響され、バスケを続けるも母親との関係に亀裂が入ります。
家族との葛藤
宮城が背番号7番でプレーする理由も、母の中で亡くなった兄・ソータとの重なりがあったのです。宮城は兄の背中を追いかけ、自分がバスケをすることで母親とのつながりを感じていました。しかし、その中で葛藤も生じ、母親に理解されず孤独な日々を送っていました。
手紙の切ない告白
宮城がインターハイに出発する前日、彼は母親への手紙に自らの想いを綴ります。「生きているのが俺ですみません」という切ない言葉が手紙に込められ、しかし母親はそれを読むことはありませんでした。このシーンは宮城の内面の苦悩を浮き彫りにします。
兄との対比と成長
宮城は兄との比較や、彼が歩んできた道に悩みました。自分の中で、兄の姿が常に見え、バスケをする理由や目的が曖昧になっていたこともうかがえます。しかし、劇中で宮城は沢北に対して、「バスケのことだけを考えて生きてきたんだろうな……」と語り、自身の葛藤を示しています。
異なるプレースタイルと共通の結末
宮城と沢北は異なるプレースタイルを持ちながらも、本作を通じて成長しています。宮城が仲間を活かすパスを使い、沢北が果敢に点を取りに行く“へなちょこシュート”を駆使します。彼らの対照的なプレースタイルとバスケの経歴が、最終的には同じ場所にたどり着くことが描かれます。
まとめ